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AFM(原子間力顕微鏡/Atomic Force Microscope)は、試料の表面形状を三次元画像として記録する顕微鏡です。先端を尖らせた探針(プローブ)を使って試料の表面をなぞるように動かし、表面の形状を調べるSPM(走査型プローブ顕微鏡/Scanning Probe Microscopy)の一種であり、さまざまな物質の測定に活用されています。
原子と原子の間には引力と斥力が発生しますが、AFMではこれらの原子間力を使って試料の表面形状を測定しています。AFMの探針はカンチレバーと呼ばれる微小な板バネの先端に取り付けられており、探針を試料表面に近づけて引力を受けるとカンチレバーが試料側にたわみ、斥力を受けると試料と反対側にたわみます。試料表面に凹凸があれば、探針の原子と試料の原子の間に働く原子間力によってカンチレバーが上下にたわむため、表面形状が測定できるという原理です。
原子間力によるカンチレバーのたわみはごくわずかなものであり、高精度に検出するためにさまざまな方法が検討されてきました。現在では、カンチレバー背面の平板部分にレーザー光を照射し、反射したレーザー光を2分割または4分割したフォトダイオードで検出する「光てこ法」がよく用いられています。AFMでの測定時には、探針が試料から離れすぎると正確な測定ができなくなり、近づきすぎると探針が試料を破壊してしまう恐れがあります。そのため、カンチレバーのたわみ量が一定になるように探針と試料の間の距離を制御しながら表面をなぞるように動かし、表面形状を測定していく必要があります。
AFMの主な特長として、試料の種類を問わずに測定できる点が挙げられます。原子間力はあらゆる物質の間に働くため、導体・半導体・絶縁体といった区別なく測定可能です。類似の顕微鏡に、金属の針と試料の間に流れるトンネル電流を検出するSTM(走査型トンネル顕微鏡/Scanning Tunneling Microscopy)がありますが、STMは試料が導体でなければ測定できないため、AFMの方がより汎用性が高いといえます。
また、AFMでの測定は試料に与えるダメージが少ないため、ほとんど非破壊で測定できます。近年のAFMにはさまざまな測定モードが備わっており、非接触での測定によって試料に与えるダメージを最小限に抑えられるモードもあります。そのため、軟らかい試料や破壊されやすい試料であっても、AFMであれば比較的容易に測定可能です。
AFMの空間分解能は極めて高く、試料表面の凹凸をナノスケールで測定できます。AFMの空間分解能は基本的には探針先端のサイズによって決まりますが、現在では原子レベルの分解能が実現されており、ナノテクノロジーの発展を支えてきました。
現在、AFMによる高精度な測定はさまざまな分野で活躍しています。たとえば、微細化が進む半導体製造プロセスにとって、AFMは欠かせない存在です。半導体の分野では極めて高い分解能や精度の計測が求められますが、基板や薄膜の表面粗さの評価などにAFMが活用されています。また、AFMはプラスチックや繊維、ゴムといった高分子の分野での活用事例も豊富です。大気中や液体中、真空中、高温、低温といったあらゆる環境下で安定した測定が行えるため、高分子の研究開発における多様なニーズに応えられます。
従来のAFMは、高分解能であるがゆえに測定時間が長くなることが課題となっていましたが、近年では測定時間の短縮が進みつつあります。また、カンチレバーの交換作業が負担になる、測定パラメーターの設定の仕方によってばらつきが発生する、といったように、操作が難しい点も課題でしたが、カンチレバーの自動交換やパラメーター設定の自動化ができる機種も登場しており、AFMの課題は徐々に解消されています。