イベントカメラとは?原理や輝度などの特徴・DAVIS346/DVXplorerの紹介
従来のカメラ技術とは根本的に異なる「イベントカメラ」について解説します。技術的な内容ですが、専門外の方々にも分かりやすく伝わるよう心がけています。さらに後半では、弊社商品「DAVIS346/DVXplorer」をご紹介しておりますのでぜひ最後までご覧ください。
イベントカメラとは?
イベントカメラとは、生物の網膜(バイオ)から着想を得て生み出されたセンサです。撮影する対象の”輝度の変化”を検知しデータを出力します。データの送信側・受信側で同じタイミングで送受信するのではなく、非同期的にデータのやりとりを行なっています。
このようにして、非同期にエンコード(データを変換すること)された時間・輝度変化・場所などの「イベント」と呼ばれるデータが生成されるのです。この仕組みが「イベントカメラ」の名前の由来です。
従来のカメラとの違い
イベントカメラは、従来のカメラと比較して優れた特性を備えています。従来のカメラは、像を結ぶための光学系(レンズ等)を搭載しており、基本的に「レンズ」「シャッター」「ファインダー」「焦点調節装置(ヘリコイド)」「撮像素子」を取り付けています。
現在のカメラは、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの半導体素子を利用したカメラが主流ですが、これらのセンサを搭載するカメラでは、被写体(および撮影環境)の光の明暗に応じて計測し、撮影画像を復元しデータ化します。
イベントカメラの原理
従来のカメラのデータ化の仕組みをもう少し技術的に解説すると、外部クロックで指定されたレート(例えば30fps)で撮影対象データを収集するということ。外部クロックとは、コンピューターのCPUとメモリや他デバイス間で交わされるクロック(デジタル回路の同期をとるための周期的信号)を指します。
一方でイベントカメラは、ピクセル(画素:色情報を持つ最小単位)ごとに非同期な処理を行ない、独立してシーンの明るさの変化に応答しているのです。
イベントカメラの特徴
イベントカメラの性能上の特徴は、以下の4つです。
- ダイナミックレンジ(140dB)
- 高時間分解能(μsオーダー)
- 低消費電力
- 被写体ブレがない
このようなイベントカメラ独自の特徴を活かして、今後ロボット工学やコンピュータービジョンの分野での応用で大きな可能性があるといわれています。
イベントカメラの応用例
それでは、具体的にイベントカメラの技術が応用されている事例をいくつかご紹介したいと思います。イベントカメラは、そのフレームレートの高さからデータ送受信の遅延が少ない特徴があるため、リアルタイム性が問われるような技術シーンでの可能性が期待されています。
一つ目の事例が「イベントカメラ×宇宙」の分野です。いくつか関連する論文が発表されているのですが、イベントカメラは宇宙状況把握(SSA)に使用されているとのことです。宇宙環境や関連システムのリアルタイムの現状把握は、宇宙事業を安全に確実に進めていくうえでとても重要。イベントカメラは、その宇宙事業に活かされているのです。
二つ目の事例が「イベントカメラ×SLAM」の分野です。SLAMとは、Simultaneous Localization and Mappingの略で自己位置推定と環境地図作成を同時に行なうことを指します。今話題のVRやARの文脈でも語られることの多いSLAMですが、今後のイベントカメラの応用に期待がかかります。
三つ目の事例が「イベントカメラ×ドローン」の分野です。ヨーロッパのスイス連邦工科大学チューリッヒ校などでは、無人航空機(UAV : Unmanned aerial vehicle)にイベントカメラを搭載した実験も行なっているようです。イベントカメラを用いて、無人航空機が周囲の物体に当たることなく避けられる仕組みを取り入れたい模様です。