変位センサは高精度に距離を測定できるセンサであり、さまざまな用途で活用されています。あらゆるものがセンシングされるこれからの時代においても、さらに活躍の幅が広がっていくことでしょう。
ここでは、変位センサの概要や種類、用途について解説いたします。
変位センサとは
変位センサは物体までの距離を測定するセンサであり、変位計とも呼ばれます。さまざまな方法を用いて物体の位置情報を測定し、物体がある位置からほかの位置へ移動したときの移動量(=変位量)を測定します。
変位センサで測定できるのは移動量だけではありません。幅・厚み・高さといった寸法測定にも用いられるほか、反りや平坦度などを測ることもできます。
変位センサの種類
変位センサは、大きく接触式と非接触式に分けられます。接触式変位センサには「LVDT(差動トランス)式」や「スケール式」などの種類があり、測定対象物に接触子が直接触れて位置を測定します。非接触式変位センサには「光学式(レーザ式)」「超音波式」「渦電流式」「静電容量式」「磁気誘導式」などのさまざまな種類があり、測定対象物に直接触れることなく位置を測定します。
ここでは、代表的な4つの変位センサの仕組みや特長を解説します。
LVDT(差動トランス)式
LVDT(差動トランス)式の変位センサは、機械的な直線運動を電圧・電流・電気信号などに変換して変位量を検出します。LVDT式変位センサの内部にはコアがあり、先端に接触子が取り付けられて測定対象物に接触しています。コアの周辺にはコイルが配置されており、コアの移動量に応じて出力電圧が変化することで、測定対象物の変位量を測定できるという仕組みです。
LVDT式変位センサの特長としては、摩擦のない構造で長寿命なこと、ミクロンメートル単位の高い分解能と精度を持つことなどが挙げられます。LVDT(差動トランス)の詳しい説明はこちら。
レーザ式
レーザ式変位センサは、主にレーザ光の反射を用いた三角測量の原理によって測定対象物の変位量を検出するセンサです。レーザ式変位センサは投光素子と受光素子の組み合わせで構成されており、投光素子から測定対象物へレーザ光を照射します。レーザ光は測定対象物に当たると反射しますが、その反射光を受光素子で検出して距離を測定する仕組みです。測定対象物が移動すると距離が変化するため、そこから変位量を知ることができます。
レーザ式変位センサには、正反射方式と拡散放射方式の2種類があります。正反射方式は鏡面体や金属のように光沢のある測定対象物を測定するのによく用いられます。拡散放射方式は一般的な測定対象物の表面で拡散した反射光を受光することにより、正反射方式に比べて測定範囲を広く取れます。
レーザ式変位センサの特長としては、幅広い素材やサイズの測定対象物に対応できること、長距離での測定ができること、高速・高精度であることなどが挙げられます。
渦電流式
渦電流式変位センサは、電磁誘導の原理によって発生する渦電流を利用し、測定対象物の変位量を検出するセンサです。センサヘッドの内部はコイルになっており、電流を流すと高周波磁界が発生します。高周波磁界に導体の測定対象物が接触すると渦電流が発生し、その大きさはセンサヘッドと測定対象物の距離に比例するため、変位量を測定できるという仕組みです。
渦電流式変位センサの特長としては、表面に水や油などの液体が付着していても測定できること、高速応答・高精度であることなどが挙げられます。渦電流式変位センサの詳しい説明はこちら。
静電容量式
静電容量式変位センサは、センサと測定対象物間の静電容量から変位量を検出します。静電容量は絶縁された導体間に電荷を貯める能力のことであり、2つの導体間の距離や形状、空間の性質などの条件で変化します。センサと測定対象物を電気的に接続させて向かい合わせることで静電容量を発生させ、その値から距離を測るというのが、静電容量式変位センサの仕組みです。
静電容量式変位センサの特長としては、測定対象物の素材を問わず測定できること、耐環境性が高いこと、ナノレベルの高い分解能と精度を持つことなどが挙げられます。
変位センサの用途
変位センサは次のように幅広い用途で活用されています。
- 移動量・運動量の測定および制御
- 幅・厚み・高さといった寸法の測定
- 反り・平坦度・歪みの測定
- ポジショニング(位置決め)
- 振動・加速度・トルク・応力などの測定
- 圧力・荷重・流量などの測定および制御
変位センサの種類によって適した用途・精度・動作環境・測定対象物の素材があるため、それぞれの方式の仕組みを正しく理解した上で選定する必要があります。また、変位センサ自体のサイズや取り付け方に制限が付くケースも多いため、設置方法についても考慮しておかなくてはなりません。