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フラックスゲートとは、磁気の計測を目的とする磁力計の一種です。高感度な検出ができる磁力計として、さまざまな用途で活用されています。
フラックスゲート磁力計では、磁気によってコイルから生じる電圧の変化を検出します。高透磁率の磁性材料でできたコア、コアを飽和させるための励磁コイル、磁気の変化を検出するための検出コイルの3点を基本的な構成とし、コアには励磁コイルと検出コイルが巻かれています。励磁コイルに交流電流を流すとコアが励磁されますが、この状態で外部から磁界が加わると、外部磁界の強度に比例して検出コイルから電流が出力されます。その出力電流の電圧変化をもとに磁界の強さを計測するというのが、基本的なフラックスゲート磁力計の計測原理です。
コアの材料としては、鉄を採用するのが一般的です。しかし近年では、鉄の代わりにパーマロイやアモルフォス合金のような透磁率が非常に高い材料を採用して、高性能化を目指すこともあります。
フラックスゲート磁力計は、「平行」と「直交」の2種類に大きく分けられます。
平行フラックスゲート磁力計は、リング状のコアに励磁コイルと検出コイルが巻きつけられた構造であり、基本的な原理は上述した通りです。計測する磁界とコアの励磁によって発生した磁界が平行することから、「平行」と呼ばれています。直交フラックスゲート磁力計に比べると歴史が古く、1930年代に発表された方式です。
もう一つの直交フラックスゲート磁力計は、1950年代に発表された方式で励磁コイルを必要としない点が特徴です。細長い磁性ワイヤコアと検出コイルの2点で構成されており、ワイヤコアの周囲に検出コイルが巻かれてます。電流を磁性ワイヤコアに直接流すと、磁性ワイヤコアの円周方向には励磁による磁界が発生し,ワイヤコアの長手方向に発生する計測磁界と直交するため、「直交」と呼ばれています。直交フラックスゲート磁力計は、平行フラックスゲートよりも後に開発された方式であり、より単純な構造であることから小型化がしやすいという特長があります。
フラックスゲート磁力計は、一般的に高感度な磁力計として知られています。磁気分解能が高く、0.1nT(ナノテスラ)といった微小な磁界の検出も可能です。また、温度安定性が良く、測定できる磁界強度範囲(ダイナミックレンジ)が広いこと、磁力計のサイズがコンパクトで持ち運びもしやすいこと、室温での動作が可能で計測のために特殊な環境を整備しなくてもよいことなど、さまざまなメリットを持ちます。
一方で、超伝導量子干渉素子(SQUID)センサやプロトン磁力計、光ポンピング磁力計といった極めて高感度な磁力計に比べると、磁気分解能の観点では劣ります。また、コイルの巻線が必要といった理由で製造コストがやや高い傾向にあることや、移動体での計測には不向きなことなどが、デメリットとして挙げられます。
フラックスゲート磁力計は、地磁気のような微小な磁界の検出に適していることから、地磁気観測所や地球物理学調査などに活用されてきました。また、鉱物探査や地雷・機雷の探査といった用途での活用事例も豊富です。
近年では、材料や構造の最適化によってフラックスゲート磁力計の小型化・高性能化が進んでいます。たとえば、薄膜のフラックスゲート磁力計が開発されるようになったことで、スマートフォンのような小型の電子機器に搭載できる電子コンパス(地磁気センサ)としても期待されています。また、生体磁気の計測によって心疾患の発見や診断を行う心磁計や、磁性ナノ微粒子の検出器として、医療機器に応用する動きも見受けられます。ほかにも、食品に混入した異物検査のための計測装置に応用されたりと、フラックスゲート磁力計の用途はますます広がりつつある状況です。