近赤外分光法は、医薬品、化粧品、食品、農作物、プラスチック製品など、多岐にわたる対象物に対して迅速・簡便にスペクトルデータを取得することができる分光分析手法です。そして得られた近赤外吸収スペクトルは、製品の品質管理や成分識別に活用できる貴重なデータとなります。
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近赤外吸収スペクトルは、横軸に波長(nm)を、縦軸に吸光度をとって、波長ごとの吸光度をグラフにしたものです(図1)。

図1.カロナール細粒20%の近赤外吸収スペクトル(分光器:M-R2、データポイント数:170ポイント(1000~1600 nm))
図1のように、近赤外吸収スペクトルは通常、シャープなピークを示すスペクトルとはならず、なだらかな山と谷がある形状となります。このため、近赤外吸収スペクトルの解析においては、ピーク高さやピーク面積をもとに定量するような単変量解析的な手法はとらず、全測定ポイントのデータを用いて全体のスペクトル形状の変化をもとに解析する多変量解析的な手法がとられます。
単変量解析においては(液体クロマトグラフィーのデータをイメージするとわかりやすいと思います)、ピーク位置(横軸の値)が多少前後にずれたとしても、自動ピーク検出アルゴリズム等でピークを把握し正確な面積値などを計算することができます。しかし、多変量解析においてはスペクトル全体の形状をもとに解析するため、横軸の値がずれるとスペクトル全体がずれ、それが結果に大きく影響することが懸念されます。
このため、多変量解析を主に使う近赤外吸収スペクトル測定においては、日ごろから標準物質のピーク値などをもとにして横軸の値(=波長(nm))を校正し、常に「横軸の値がずれていない」状況を構築しておくことが極めて重要になります。
近赤外吸収スペクトルの横軸のずれが結果に大きく影響する例を以下に示します。
図1のカロナール細粒20%の近赤外吸収スペクトルと、その濃度違いの製剤であるカロナール細粒50%の近赤外吸収スペクトルを比較すると図2のようになります。なお、ここでは近赤外分光法での常套的なスペクトル前処理であるSavitzky-Golay法による二階微分とスムージングを行った後のスペクトルを示しています。

図2.カロナール細粒20%(青)とカロナール細粒50%(赤)の
近赤外吸収スペクトルの比較(分光器:M-R2、データポイント数:170ポイント(1000~1600 nm))
図2の2つのスペクトル形状の類似性を数値化するには様々な手法がありますが、ここでは汎用される手法であるスペクトル間の相関係数を計算してみます。その結果、図2の赤と青のスペクトル間の相関係数は0.9401となりました。なお、相関係数は1に近いほどスペクトル形状が類似していることを示します。
次にカロナール細粒20%のスペクトル(青)を横軸方向にデータポイント1つ分ずらしてみます。

図3.カロナール細粒20%(青)の近赤外吸収スペクトルとそれを横軸方向1ポイントずらしたスペクトル(緑)。
赤破線はカロナール細粒50%(赤)の近赤外吸収スペクトル
この時の青と緑のスペクトル間の相関係数は0.9766となり、図2のカロナール細粒20%とカロナール細粒50%の場合よりも1に近く、「似ている」という判断結果になっています。これはグラフの見た目とも一致していると思います。
続いて、カロナール細粒20%のスペクトル(青)を横軸方向にさらに1ポイント分(合計2ポイント分)ずらしてみます。

図4.カロナール細粒20%(青)の近赤外吸収スペクトルとそれを横軸方向2ポイントずらしたスペクトル(紫)。
赤破線はカロナール細粒50%(赤)の近赤外吸収スペクトル
この場合の青と紫のスペクトル間の相関係数は0.9081となり、図2のカロナール細粒20%とカロナール細粒50%の場合よりも「似ていない」という解析結果になってしまいます。グラフ形状は全く同じなのに、2ポイント分(波長にして約7 nm)ずれただけで、別種の薬剤のスペクトルよりも「似ていない」という結果になるのです。これでは近赤外吸収スペクトルの形状をもとにして成分の識別を行うという解析の精度が全くでたらめになってしまいます。
このように、多変量解析を汎用する近赤外吸収スペクトル測定においては、横軸の値(=波長(nm))の校正を定期的に行い、横軸がずれていない状況を常に構築しておくことが、正確な解析のためには非常に重要になってくるのです。
当社では、S-G1やM-R2といった反射型の近赤外分光器を購入されたユーザー様を対象として、標準物質を用いた波長校正サービスを行っております。定期的な波長校正を実施することによって、信頼性の高い解析結果を導出してください。
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